業種ごとの労災問題を知る

建設、農業・林業、製造、運輸、医療・介護など、各業界ごとに特有の労災問題の傾向や解決のポイントがあります。業種別の特徴を押さえ、適切な慰謝料・賠償金の取得のために役立つ情報をまとめました。

建設業

建設業では、高所での作業や重機の使用が多いため、墜落・転落・転倒などの事故が頻発しています。また、クレーンや重機による挟まれ・巻き込まれ事故、資材の落下による負傷や、夏場の屋外作業による熱中症などのリスクもあります。

農業・林業

農業・林業では、トラクターやチェーンソーなどの機械による巻き込まれ・切断事故が多く見られ、傾斜地での作業や伐採中の転倒・転落事故が重大な事故が発生することがあります。夏季の熱中症や繁忙期の長時間労働などのリスクも存在します。

製造業

製造業では、機械の巻き込み事故・切断事故による労災事故が多発しています。悲惨な死亡事故も、後を絶ちません。また、製造現場で働く方は、過労死、騒音性難聴、有害物質による健康被害など、様々なリスクにさらされています。

運送業

 運送業では、トラックドライバーの過労死事案が多発しています。法改正で長時間労働への規制が厳しくなりましたが、それでも、長時間労働に伴う労災事故が起き続けています。

医療・介護業

医療・介護業で働く方は、常に、感染症などのリスクを抱えています。感染症防止のための対策が不十分であった場合、勤務先に対して損害賠償責任を追及できます。また、人手不足により、長時間労働に伴う労災問題も深刻になっています。

サービス業

サービス業では、長時間労働に伴う労災問題が深刻です。早朝から深夜までの残業が常態化し、そのせいで過労死や脳血管障害を発症するケースが多発しています。

労働災害別・解決のポイント

A長時間労働に伴う労災(過労死・脳血管障害等)

長時間労働に伴う労災問題は後を絶たない

「働き方改革」ブームが起きてから何年も経ちましたが、いまだに、長時間労働に伴う労災問題が後を絶ちません。厚生労働省の統計によれば、令和5年度以降、長時間労働に伴う労災が認められたケースは、毎年1,000件を超えています。
業種別では、医療・介護業や、製造業において、長時間労働に伴う労災事案が多発しています。

長時間労働はなぜ過労死につながるのか

長時間労働による過労死の原因として、血圧の上昇、血管の収縮、心拍数の増加、血糖値の上昇が重なることが挙げられます。
長時間労働が続くと、仕事上のストレスを慢性的に感じるようになり、余暇や睡眠の時間が減少してストレスの解消ができなくなります。それにより、自律神経の乱れや、ストレスホルモンの分泌量が増加し、血圧の上昇などにつながります。

有利な解決を目指すために

POINT01
長時間労働の証拠を固める

長時間労働に伴う労災事案を争うためにもっとも大切なことは、「長時間労働の証拠を固める」ことです。
会社が協力的で、労基署に正確な労働時間を報告してもらえる期待があれば、心配ありません。ただ、会社が労基署に虚偽の報告をしたり、そもそも労働時間の管理が適切にされていなかったりするケースは、珍しくありません。その場合は、労働者が長時間労働の証拠を、積極的に労基署に提出しなければなりません。長時間労働の証拠としては、タイムカードや入退室記録のほか、次のようなものが挙げられます。

  • ・通勤に利用した交通系ICカードやETCカードの履歴
  • ・業務に使用したPCのログイン・ログオフ記録
  • ・電子メールの記録
  • ・業務で使用していた電話の発信・着信履歴
  • ・ご自身が作成した手帳や日記
POINT02
主治医に積極的な協力をお願いする

長時間労働に伴う労災事案を争ううえでは、発症した病気と長時間労働との「因果関係」も重要です。病気が「長時間労働のせい」で発症したものであることを、「医学的に説明できるかどうか」がポイントになります。
まずは、主治医に病状を丁寧に伝えて、カルテに正確な記録を残してもらってください。カルテの記録は、労災事件を争う際に、重要な証拠となるケースがあります。また、主治医と相談しながら、MRI検査などを受けて、「医学的な観点からの証拠固め」を積極的に行うようにしてください。
何よりも、主治医との信頼関係が重要です。主治医との円満なコミュニケーションを大切にして、積極的な協力を得られるように心がけてください。

関連する業種

建設業
農業・林業
製造業
運送業
医療・介護業
サービス業

B機械の巻き込み事故・切断事故

現場作業で後を絶たない巻き込み・切断事故

製造業や、農業・林業、建設業など、様々な業界において、機械の巻き込み事故・切断事故が後を絶ちません。例えば、製造業では、プレス機械への挟まれや、ロール機への巻き込みなど、悲惨な事故が多発し、死亡事故も度々発生しています。

巻き込み・切断事故はなぜなくならないのか?

巻き込み・切断事故の多くは、安全装置を適切に使用していなかったり、チェック体制が不十分であったりと、いわゆる「人災」によって発生しています。安全意識の低下が、取り返しのつかない重大事故を発生させています。

有利な解決を目指すために

POINT01
事故現場にどのような問題があったかを整理する

巻き込み・切断事故においては、会社側が「会社は悪くない」「防げない事故だった」「本人の不注意によるもの」と反論してくることがよくあります。
会社側からの反論に備えて、事故現場にどのような問題があったかをなるべく詳細に整理しておくことが大切です。
例えば、「機械の安全な使用方法について教育を受けていなかった」「安全装置が使用されていなかった」「安全確保に必要な人員が不十分だった」など、会社側の体制に問題があれば、安全配慮義務違反を問うことができます。

POINT02
協力者を探す

本来であれば安全配慮義務違反が認められるべきケースでも、会社が問題点を隠して、裏付けが得られないことはしばしばあります。そのようなときは、同僚や、直近の退職者など、現場の事情に詳しい協力者を探すことも重要です。1人の力では解決できないことも、複数人の大きな力によって解決できることがあります。

関連する業種

建設業
農業・林業
製造業

C転倒・墜落事故

転倒・墜落事故は長期療養事案・死亡事案が特に多い

転倒・墜落事故は、労災の中でも、長期間の療養を余儀なくされる事案や、死亡事案が、特に多いものです。建設業や製造業をはじめ、幅広い業種で発生しています。

転倒・墜落事故はなぜ起きるのか?

転倒事故は、「作業現場の清掃が行き届いていない」「段差に転倒防止対策が講じられていない」など、基本的な対策不足によって発生するケースが多くあります。
また、墜落事故は、「親網や安全帯の使用を指導されていない」「足場や作業台が適切に固定されていない」など、安全対策の問題から発生するケースが多くあります。

有利な解決を目指すために

POINT01
事故現場にどのような問題があったかを整理する

転倒・墜落事故においては、会社側が「本人の不注意ではないか?」「会社は悪くない」と反論してくることがよくあります。
会社側からの反論に備えて、事故現場にどのような問題があったかをなるべく詳細に整理しておくことが大切です。
例えば、「作業現場の清掃が行き届いていない」「段差に転倒防止対策が講じられていない」「足場や作業台が適切に固定されていない」ことが原因であれば、事故現場の写真を撮影して証拠を保全しておくことが有効です。
また、「親網や安全帯の使用を指導されていない」ことが原因であれば、会社から渡された作業手順書・マニュアルや、研修資料、会社での指導内容を詳細に記録した手書きメモなどが、有力な証拠になりえます。

POINT02
主治医に積極的な協力をお願いする

転倒・墜落事故で後遺障害が残った場合には、「そもそも後遺障害を認める医学的な根拠はあるのか?」「本当に労災が原因なのか?」といったことが争点になるケースがあります。
主治医と相談しながら、必要な検査を受けるなど、「医学的な観点からの証拠固め」を積極的に行うようにしてください。
何よりも、主治医との信頼関係が重要です。主治医との円満なコミュニケーションを大切にして、積極的な協力を得られるように心がけてください。

関連する業種

建設業
農業・林業
製造業

D熱中症

熱中症対策が法律上の義務に

熱中症は、建設業・農業・林業など、外で仕事をする時間の長い業種の「天敵」です。厚生労働省の統計によれば、令和5年以降、職場における熱中症による死傷者の数は、毎年1,000件を超えています。
令和7年には、熱中症対策が、労働安全衛生規則の改正により、「法律上の義務」となりました。このような流れもあり、今後、職場における熱中症について、労災事案として争われるケースが増えていくと予想されます。

熱中症はなぜ起きるのか?

熱中症は、長期間にわたって炎天下で作業する中で、体温調節ができなくなったり、脱水症状を起こしたりすることでおきます。重篤な場合は、意識障害、けいれん、昏睡などの症状が現れ、死に至ることもあります。
熱中症を防ぐためには、こまめな休憩や、暑さ対策、水分補給など、基本的な対策を徹底することが大切です。また、熱中症になった方を周囲がいち早く発見し、身体の冷却や、医療機関への搬送などの措置をとることも、重篤な労災事故を防ぐために不可欠です。
職場における熱中症は、会社が対策の重要性を十分に意識せずに、休憩時間を確保しなかったり、熱中症対策の教育を怠ったりすることで発生するケースがよくあります。

有利な解決を目指すために

POINT01
なぜ熱中症になったのかを深く考える

熱中症は、「こまめな水分補給をしていなかったから」「体調が悪くなってすぐに休憩をとらなかったから」など、「本人のせい」にされがちです。しかし、実際は、会社が十分な安全対策をとっていれば、職場における熱中症の多くは予防することができます。
まずは、「熱中症になった原因は何なのか?」「会社の対策に問題はなかったのか?」を考えることが大切です。このような素朴な疑問が、会社と争ううえで大きな力になります。

POINT02
主治医に積極的な協力をお願いする

熱中症の原因を探るうえでは、主治医に専門的な意見を求めることも大切です。
「なぜ熱中症になったのか?」を、医学的な根拠をもって示すことができれば、会社と争うための強力な武器になります。
何よりも、主治医との信頼関係が重要です。主治医との円満なコミュニケーションを大切にして、積極的な協力を得られるように心がけてください。

関連する業種

建設業
農業・林業
運送業

E腰痛

腰痛はもっとも発生件数が多い職業病

厚生労働省の統計によれば、腰痛は、休業4日以上の労災事案の6割程度を占めています。仕事が原因となった腰痛は、重い荷物の持ち運びを伴う「運送業」において顕著に見られます。その他、患者・利用者の介助を伴う「医療・介護業」においても、よく問題になります。
仕事が原因で発症した腰痛は、安全配慮義務違反を理由に、会社に対して損害賠償請求ができることがあります。例えば、トラック運転手が椎間板ヘルニアを発症した事案では、腰痛予防への配慮を欠いたことを理由に、会社の損害賠償責任が認められています。

腰痛はなぜ起きるのか?

腰痛は、前屈みや中腰での作業時間が長かったり、荷物の積み卸しを繰り返したりと、不自然な姿勢での作業や反復動作などが原因で発症します。これらの動作によって、椎間板や脊柱への負荷が慢性的に生じることで、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄などの障害につながります。

有利な解決を目指すために

POINT01
職場の腰痛予防対策に問題がなかったかを振り返る

職場における腰痛予防対策については、「職場における腰痛予防対策指針」に詳しい基準が示されています。例えば、重量物の取扱いを伴う仕事では台車を活用すること、医療・介護現場では福祉用具を導入すること、1人1人に過剰な負担がかからない人員体制を確保すること、作業量・作業時間を調整することなどが、必要な腰痛予防対策として挙げられています。
もし、職場においてこのような対策が講じられていなかったのでしたら、会社の「安全配慮義務違反」を理由に、損害賠償責任を追及できるかもしれません。職場でどのような腰痛予防対策が講じられていた/講じられていなかったかを整理し、「争えるポイント」を検討することが大切です。

POINT02
主治医に積極的な協力をお願いする

腰痛の原因を探るうえでは、主治医に専門的な意見を求めることも大切です。
「なぜ腰痛になったのか?」を、医学的な根拠をもって示すことができれば、会社と争うための強力な武器になります。
何よりも、主治医との信頼関係が重要です。主治医との円満なコミュニケーションを大切にして、積極的な協力を得られるように心がけてください。

関連する業種

運送業
医療・介護業

F振動障害・騒音性難聴

振動障害・騒音性難聴は建設業に多い職業病

振動障害・騒音性難聴は、建設業においてよく見られる職業病です。
振動障害は、チェーンソーやさく岩機などの建設用機械を長期間使用することで、末梢循環障害などを発症するものです。年間200件以上が、労災認定されています。
また、騒音性難聴は、長期間にわたって騒音にさらされることで、難聴を発症するものです。こちらも、年間200件以上が、労災認定されています。

振動障害・騒音性難聴はなぜ起きるのか?

振動障害については、「チェーンソー取扱い作業指針」や「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」で、必要な予防対策が定められています。具体的には、振動障害を発症しづらい機器の選定や、作業時間の適切な管理などが求められています。
また、騒音性難聴については、「騒音障害防止のためのガイドライン」で、必要な予防対策が定められています。具体的には、継続的な騒音レベルの計測や、聴覚保護具の使用、作業時間の管理などが求められています。
振動障害・騒音性難聴は、会社がこれらの対策を怠ったことが原因で発症するケースも少なくありません。その場合は、会社に対し、安全配慮義務違反を理由に、損害賠償責任を追及することができます。

有利な解決を目指すために

POINT01
振動障害・騒音性難聴の予防対策に問題がなかったかを振り返る

振動障害・騒音性難聴について会社の責任を問えるかどうかは、各指針に定めるような予防対策を適切に講じていたかどうかが大きなポイントになります。
もし、職場においてこのような対策が講じられていなかったのでしたら、会社の「安全配慮義務違反」を理由に、損害賠償責任を追及できるかもしれません。職場でどのような予防対策が講じられていた/講じられていなかったかを整理し、「争えるポイント」を検討することが大切です。

POINT02
主治医に積極的な協力をお願いする

振動障害・騒音性難聴の原因を探るうえでは、主治医に専門的な意見を求めることも大切です。
「なぜ振動障害・騒音性難聴になったのか?」を、医学的な根拠をもって示すことができれば、会社と争うための強力な武器になります。
何よりも、主治医との信頼関係が重要です。主治医との円満なコミュニケーションを大切にして、積極的な協力を得られるように心がけてください。

関連する業種

建設業
農業・林業
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